有機農業の生産者との対談企画・第6弾、大内英憲さんの後編です。
前編 では、新規就農から経営を安定させるまでの取り組みについて伺いながら、日本と海外のオーガニック事情について語り合いました。
後編では、今の日本の有機農業、特に流通における課題と、その解決に向けて個人ができることとは何か、話を深めていきます。

【大内】大内英憲さん
オーガニック野菜の流通に足りないもの
【大内】それもですが、東京にいらっしゃるので、あっちこっちに顔出して話を聞いて来てほしいです。いろんな人と会ってもらって、情報を仕入れてもらいたい。それが一番ですね。
【大内】はい、それはこっちもありがたいです。そうやって融通きかせられる関係って、いいですよね。僕もガチガチに決めてやるのは苦手なんです。
【大内】理想は、そうですね。
【大内】初めて今年、某大手の流通業者、それもオーガニック野菜の取扱もしている会社と付き合ったんですが、そこで色々わかったことがあるんです。
実際に畑に行くと、大きすぎるものから小さすぎるものまで、ちょっと虫がかじったようなものも、ありますよね。それが自然でもあるので、有機だと、そういうものもある程度は出荷します。もちろん、野菜に傷みがないか、虫が残ってないか、ちゃんとチェックした上でです。
でも大手はものすごい数のお客様を抱えていて、そのほとんどが、ごく一般の消費者なんですね。有機野菜にこだわって農家のことも考えて買ってる人とは違って、まだまだ慣行農法(編者注:農薬や化学肥料を使う一般の農法)で作った、形も大きさも色も規格に揃えて、スーパーでビシッと並んでいる、あれをイメージされているようで…
【大内】そう、業者がそうなんです。だから僕びっくりしちゃってね。自分の野菜を作る技術もまだまだ未熟ですが、流通業者もただ謝ってクレーム対応するだけじゃなくて、「実際の畑って、こうだよ」っていうのを、もう少し発信してくれるといいのかな、って思っちゃいますね。事前に一つ説明しておくだけでも、クレームもずいぶん変わってくると思うんですけど。
【大内】そうですね。
ただ、致し方ないことってありますよね。例えば、農家さんが虫を振り払って、チェックして出荷してるのに、ごくたまにレタスの奥の方に虫が残ってたとか。農家さんがちゃんと努力した上で、それでもダメな場合って、どうしてもあって、その時は素直に交換か返金に応じています。
【大内】うちもそうですね。
農家と八百屋と消費者と コミュニケーションしていきましょう!
【大内】あとは売り方の工夫もありますね。問題あったらちょっと値段を下げるとか、小さかったら2個1セットで売るとか。
― そういう工夫も大事ですよね。結局、農家さんと八百屋、八百屋と消費者とが、ちゃんとコミュニケーションを取らなきゃダメなんですよ。ただ謝ってお金を返すだけじゃなくて、お互いに事情を話して、その上でじゃあどうしましょうか、って。でもそうしているうちに、慣れてくると思います。まだオーガニック野菜の流通って、全然成熟していないマーケットなので、お客様も含めて慣れていないんだと思いますよ。【大内】今年、大手と付き合ってみて、業者の中にも「知らない人」が結構いる、と思っちゃいましたね。担当の中に、農業や青果、できれば有機野菜に詳しい人が一人でもいれば、知恵を出し合っていろいろできたんじゃないかな。
【大内】あぁ、なるほど。
言い方が悪いですが、農家さんだって馬鹿じゃないんだから、大きさを揃えるとか、ちゃんとやってますよ(笑)
【大内】そうそう。やってるんですよ(笑)
【大内】そう。うん。
だからマクミノルでは、農家さんをちゃんと紹介していくようにしています。うちのホームページを見れば、この野菜はこの人の作物で、こういう考えで作ってるんだな、とか、実際の畑ってこうなんだなっていうイメージが湧くようにしたくて、こうやって話を聞かせてもらって、写真を撮って、記事にして載せています。
【大内】あぁ、いいですね。
オーガニック農業も ちゃんとした職業なんです
【大内】そういうイメージは確かにあるかもしれない。
― あんまりお金の話をしたがらない。でも実際に生産を続けるには、お金も必要なんですよね。出荷に必要な軽トラを買うにも、動かす燃料にも、受発注の業務や情報発信に使うパソコンや通信費にも、もちろん日々の生活費にも。だから僕はなるべくお金の話をしたいんです。ちゃんと経営の話をしたい。お金儲かる作物がなにで、とか。「気持ちを込めて、子供達に食べてほしくて、頑張ってます」っていう話が好きな人は多いんですが、それはどんな農家さんでも考えていらっしゃるんですよね。そこじゃなくて、有機農業を続けるには、具体的にどんな苦労があるのか、どうやって乗り越えているのか、職業としての農業を紹介したいんです。
【大内】それ大事ですよ。世の中の人は、みんな知らないでしょう。
【大内】やってて、本当に良い職業だと思いますよ。
【大内】そうです。面積を広げると、次元が違うくらい、作り方から使う機械から、すべて変わってくるんです。植える間隔も、肥料の種類も入れる量も、品種さえも全部見直します。
大きな理想より目の前の一歩を大事に
【大内】うーん、今は、自分がとにかく、やるしかないと、それだけですよね。あーだこーだ人に言ったって、結局誰もやらないなら、実現しないし意味ないですよね。
あーするべき、こーするべきって、頭でっかちな理想って、いっぱい言えます。作る方なら農薬止めろとか、私たちの物流の立場なら、オーガニック野菜を取扱う市場がないので、作った方がいいとか、思うところはあります。それを誰かにやってよ、じゃなくて、小さくても自分が始めないといけないというか、待ってても何も始まらないと考えるようになりました。以前は「あるべき!できろ!」みたいなことを、よく言ってたんですけどね(笑)
【大内】そう、僕もそうでしたもん(笑)
オーガニックの野菜を少しでも多く売ることがすごく大事であって、大内さんの立場なら、美味しくてちゃんとした野菜を少しでも多く作るっていうことじゃないですか。結局それが一番近道っていうか、遠回りに思えて一番早いかな、って考えるようになりました。
【大内】その方が確実ですよね。最近思うようになったのですが、自分で「こうするべき」とか「将来こうしたい」って漠然とした理想を持ち、それに向かっていくことは大事です。でも、まずは目の前にあることを一所懸命やる、その中で自分なりの課題があるんです。量を多く作りたいとか、品質を上げたいとか。それに取り組んでいくなかで、今回みたいに「ビーツがたくさん取れ過ぎちゃった!」とかね(笑)
そうすると、色んな人に「このビーツ、なんとか売れないですか?」って話するわけです。それって人を巻き込んでるんですよね。で、その人がまた「販路ないですか?」って別の人を探してるんですよ。そのうちに、自分の販路もどんどん広がっていく気がしています。
もともと僕が、頭の中でこうした方がいいなって思ってたのとは、また、もしかしたら違う方向に進むのかもしれない。
【大内】ひたすら一所懸命やってると、色んな人を巻き込んでいけるんです。もうじゃかじゃかじゃかって(笑) そうしながら規模拡大して、内容も充実してる。
一方で「これ最近人気あるらしいぞ」って仕入れたのって、実はあんまり売れないんですよ。
【大内】あぁ、そういうものですか。
【大内】あぁ、なるほどね。
【大内】うっそー(笑) じゃ、もっといっぱい作ります。
【大内】そう、あるある。
そういう一歩一歩の積み重ねって、すごく大事で、その結果が規模拡大かなと。
野菜を扱うのは「積み重なる」仕事 だから楽しい
【大内】マクミノルさんみたいに、そういう受け止め方をしてくれる所は良いですね。けっこう目先の損得だけで判断する業者さんが、たまにいましたので。まあ農家もそうですけど。
でも目先の損得だけだと、それだけの関係だから、発展しないですよね。
【大内】そうですね。とりあえず金になんないけど、これやっとけばいい、また繋がるってこともありますよね。
昔いたIT業界では、大きな金額の取引が動いていくんですけど、ものすごい刹那的なんです。ITの商品って、一回導入すると次は5年後とか10年後、その頃にはシステムの内容も、担当者も変わっているので、積み重なっていかない感じ。特に外資系の会社で、売ってこい、売ったらボーナスやるよ、そういう文化だったので、ただ、売った、貰った、売った、貰ったの繰り返し。
【大内】うーん。
【大内】付き合いが続いていると、たまにいい話がコロって来ますよね。それをとにかく拾うしか無い(笑)
【大内】多く作る(笑)
【大内】うんうん。頑張ります!

取材日: 2017/10/29
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